
どんな風に子どもを育てたらいいか心配…
子どもがどんな力を身につけたらいいんだろう…
自分で考える力、日常生活に困らないように育てられるかな…

ヒントをくれる本を紹介するよ!
こんにちは、みかんマンです。
養老孟司さんの「子どもが心配 人として大事な三つの力」を読みました。
養老孟司さんは、平成で1番売れた新書として有名な「バカの壁」の著者です。
保育園の理事長を30年以上務めてきた養老さんが、「子どもが心配」になって四人の専門家と対談したものがこの本の内容です。
先にサブタイトルの「三つの力」を紹介します。三つの力とは
- 学びのための根本的な能力「認知能力」
- 共感する力
- 自分の頭で考える人になる
ことを指します
この本は、いわゆる「ハウツー本」ではありません。養老さんと専門家の話を聞いて「私たちが考える」ための本です。養老さんも
ああしろ、こうしろという具体的な指示や処方が書かれているわけではない。考え方の基本が語られているだけである。その先の具体的なことは自分で考えなさいということになる。
まえがきより
と言っています

えー、教えてくれないの?

そもそも、子育てに正解はないよ!

正解はなくても、間違いたくはない!

そうだよね。「自分なりの答え」を見つけるためにこの本はとても役に立つよ!
この記事では、以下の内容を紹介します
- 三つの力「認知能力」「共感する力」「自分の頭で考える人になる」について
- 四人の専門家との対談で、印象的な内容
- 感想
【要約&感想】子どもが心配 人として大事な三つの力

「ケーキが切れないこども」を変える教育とは 宮口幸治×養老孟司
認知能力については、「ケーキの切れない非行少年たち」の著者、宮口幸治さんとの対談です。特に印象に残った3点を紹介します
- 「勉強ができない」のが分かれ道
- 適切なトレーニングが必要
- やっぱりモチベーションが大事
「勉強ができない」のが分かれ道
非行少年に関わる宮口さんは、非行に走る原因を「学校の勉強についていけない」ことだと言います。
勉強についていけないから学校がつまらなくなる。イライラするようになり、友だち関係もうまくいかず万引きなど悪いこと、非行に走るようになるのです
宮口さんは、非行に走る少年たちの特徴を紹介しています
- 見たり聞いたりする力が弱い
- 感情をコントロールするのが苦手
- 何でも思いつきでやってしまう
- コミュニケーションが苦手
- 力加減ができない
詳しくは宮口さんの著書「ケーキが切れない非行少年たち」で紹介されています
認知機能の弱さを見つける方法
児童精神科医の宮口さんは、公立の病院から「医療少年院」で働くことにしました。それは、「本当に困っている子どもほど病院には来ない」ことがわかったからです。
病院や学校では助けが得られず、非行に走る。そこで初めて「認知能力」に問題があることがわかる。
たとえば「図形を書き写せない」「ケーキを三等分にできない」のです
そんな子どもたちを助けようと世界中の文献を探した宮口さん。「見る力」「聞く力」など分野別に本を集めると、一人あたり何十冊、何万円もしてしまう。

そんなにお金の出すのは大変…
そこで、認知機能の弱さを見つけ、改善するための独自のトレーニングを開発しました。今では「コグトレ」として出版されています。
「学習の土台をしっかりつくり、ちゃんと授業を受けられるようにしてあげる」ことを目的として、コグトレは今では少年院や学校などで使用されています。
様々な「コグトレ」がありますが、人気のあるものを2種類紹介します
やっぱりモチベーションが大事
養老さんは、大学で解剖学を教えた際に、国家試験に落ちる学生を見て「医者になりたい」というモチベーションの低い生徒ほど学校のテストも悪かったという経験があります。
宮口さんとの対談で、「決め手はモチベーション」だと2人は同意。

どうやってモチベーション上げるの?

「見通し」「目的」「使命感」だと宮口さんは言ってるよ!
宮口さんは自身の体験から、見通しが立たない、目的がわからない仕事はやる気以前の問題で、これがわかってくると「よし、がんばろう」と思えました
私もよく「これなんのためにやるんだろう?」と思うことがあり、そう思うとやる気が出ませんでした…
宮口さんは、今度は「これに人生をかける」という「やりがい」を感じないと強いモチベーションにつながらないことに気づきました。
精神科医になってからも「治せばいい」という感じにずっとモヤモヤして、医師という仕事に絶望すら感じるほどだったそうです。
そこで非行少年たちに出会ったことで「この子たちを何とかしなくちゃいけない」という使命感にスイッチが入りました
私は、人にお願いするときに「見通し」「目的」を省略してしまうことがあります。意識して伝えることで、相手のやる気が出るような言葉をかけたいと思いました
ちなみに、「モチベーション」について詳しく勉強したい人はこちらの本がおすすめです
日常の幸せを子どもに与えよ 高橋孝雄×養老孟司
小児科医の高橋さんとの対談では「日常の幸せを子どもに与えよ」というう話がありました。要約すると、
- ネットより実体験
- ネットに頼ると「負け続ける」育児になる
- 「共感力」のある人が「成熟した大人」
ネットより実体験
これはわかりやすいですね。インターネットの普及により、面と向かってコミュニケーションをとる機会が減りました。高橋さんは「無言化」「孤立化」「実体験の減少」が問題だと指摘します。
ネットばかり使うと一人で無言でいる時間が増えて、SNSなどでコミュニケーションがとれていると「錯覚」してしまいます。
高橋さんと養老さんの対談では、実体験の例として、「スマホなしのキャンプ」のお話がありました。
高橋さんは、子どもにとって本当の意味で良い環境とは「何不自由のない暮らしをさせることではなく、キャンプのように、適度なストレスがある状態」だと言います
ゲームのように一瞬で不可能が可能になることはありませんが、小さなことを自分の力で成し遂げる充実感や達成感を得られる経験が大切です
ネットに頼ると「負け続ける」育児になる
今では、なんでもインターネットで情報を検索できます。困ったことがあれば、「正解」を探してどんどん情報を探します。ここに問題があると高橋さんは言います。
なぜなら「子育てに正解はない」からです。ネットで情報検索すると、「こっちの方が良い」「もっと良い情報がある」と「比較」しがちです。そうするとキリがないですよね。
高橋さんは「正しい育児」という「鬼」をつかまえる「追いかけっこ」の状態が「負け続ける育児」につながると言います。
養老さんも『現代人はよく「ああすればこうなる」と思っている』とグサリ。育児を解決する便利な公式なんて存在しないんですよね
比べることは仕方ないにしても、まるで無数の敵と戦うような状況になるのは避けたいものです
「共感力」のある人が「成熟した大人」
高橋さんは小児科医の経験から、子どもも大人も、成熟した人というのは「共感する力」のある人だと感じています

どうすれば「共感力」がつくの?

ここでも「実体験」が大事だよ!
繰り返しになりますが、「共感力」を高めるためには「実体験」が必要です
- 自分がこうしたら相手がこう感じる
- 言ってはいけないこと、やってはいけないことにブレーキをかける
- 新たな困難に出会っても、想像力を働かせて解決する
これらはすべて「実体験」あってこそ身につくものです
「共感力」を身につけた「成熟な大人」が人を幸せにするのだと対談は締めくくられます
自分の頭で考える人を育てる 高橋和也×養老孟司
自由学園学園長の高橋和也さんとの対談では「自分の頭で考える」ことについて語られます
自分たちのことは自分でやる「自労自治」「生活即教育」が自由学園のモットー。対談で印象的だったのは以下
- 木に登りながら落ち方も学ぶ
- 何を学んだかを自己評価させる
- 子育て、教育には手間暇かかる
木に登りながら落ち方も学ぶ
自由学園には、様々な高さの木があり、「木登り」をする遊び場になっています。自分で登れる高さを判断し、安全な降り方、どの高さあらジャンプできるかなどを「体得」していきます
危険なのは、大人が「子どもが登れない高さに乗せてあげる」ことだと言います

自分で登れないところに乗せてもらえたら、うれしいんじゃないの?
降りれなくてケガしちゃうから?

ケガの危険もあるけど、
子どもが判断する機会を奪っちゃうことがキケン!
これは木登りに限らず、気をつけたいことだと思いました。
よかれと思ってつい手助けしちゃうこと、ありませんか?もちろん大きなケガをさせたくはありませんが、立ち止まって「子どもの判断する機会」を奪っていないか考えたいものですね
何を学んだかを自己評価させる
自由学園では1年の終わりに「まとめ」として、1年間に学んだ内容を自分の言葉でまとめます
先生はコメントを入れて、家庭に送るのだそうです。何を学び、どう成長したのかが伝わります。これはテストの点数だけでは計れないものです。
「知識を詰め込むだけ」から脱却した自由学園の形を知ることができました
子育て、教育には手間暇かかる
自由学園では、植林活動を行いました。その木を使って、校舎を建てたのですが、植林を行ったのは70年前。その時その時、在学していた生徒が作業に関わっていますが、木を植えた学年、作業のための屋根を作る学園と様々。植林活動に即座に成果を求めることはできません。
しかし、「植林の醍醐味は、結果が自分自身に返ってこないことだ」と言った人がいるそうです。そして高橋さんは言います
自分を超える価値や、理想に触れていくことが未来の社会をつくる生徒たちが育つ上で大切
長期的な視点をもつことの大切さを教えてもらいました
自由学園について詳しく知りたい方はこちらもどうぞ
感想

「子どもが心配 人として大事な三つの力」は「認知能力」「共感する力」「自分の頭で考える人になる」この三つの力について語られるものでした
「実体験」というのが一つの共通するキーワードでした。ネットやゲーム、テレビを全否定するつもりはありませんが、「実体験」を得るための時間がそれだけ奪われているという事実を受け止めなければいけないなとしみじみ思いました。
本当に「子どもが心配」なら、長期的な視点をもって「子どもを変える」のではなく、「大人が変わる」ことが必要です。子どもは大人を見て育つもの。ネットでなんでも見れる、行った気になれる、そういう時代だからこそ「外に出る」「五感で感じる」ことが改めて大切なのだと教えてくれる1冊でした。
一部しか紹介していませんが、専門家の先生たちのお話もわかりやすくあっという間に読み切ってしまいました。
養老孟司さんの本に興味が湧いた方は「バカの壁」も読んでみると「自分の価値観」を揺さぶられて面白いです。個別記事も書いたのでどうぞ
今回の紹介は以上です
興味をもたれた方はぜひ読んでもらえるとうれしいです!

